「うちの施設、スタッフが全然集まらない…」「このまま利用者さんを受け入れ続けられるのか不安」
そんな悩みを抱えながら毎日シフトに入っている介護士のみなさん、こんにちは。特養介護士・室岡です。
地方や山間部(やまあいの地域)で働いていると、スタッフ不足は本当に深刻な問題ですよね。求人を出しても応募がない、やっと採用できたと思ったらすぐ辞めてしまう……そういった話を同業の仲間から聞くたびに、胸が痛くなります。
そんな中、2026年4月3日に政府が介護保険法などの改正案を閣議決定(かくぎけってい:内閣の会議で正式に決定すること)しました。今回の改正案には、過疎地や人口が減っている地域の介護サービスを守るための新しい仕組みが盛り込まれています。

室岡「法律の話って難しそう…」と感じる方も多いと思います。でも大丈夫です。このブログでは、現場で働く仲間に向けて、難しい話をできるだけわかりやすく伝えることを使命にしています。今日は一緒に、この改正案が私たちの現場にどう関係するのかを確認していきましょう。
- 過疎地・中山間地域を「特定地域」に指定し、人員基準を緩和
- 訪問介護に定額報酬を導入し、移動コストの高い地方事業所を支援
- 対象は全市町村の約半数にあたる885市町村
- 施行時期は今国会での成立後、政令で定められる予定
そもそも今回の法改正って何が変わるの?


まず、今回の改正案のポイントをざっくり整理します。
今回の介護保険法改正案の大きな柱は、大きく分けて以下の2つです。
- 「特定地域」における人員基準(じんいんきじゅん:施設やサービスに必要なスタッフの人数・資格などの最低条件)の緩和
- 訪問介護への定額報酬(ていがくほうしゅう:サービスの回数や時間に関係なく、一定の金額が支払われる仕組み)の導入



少し詳しく説明します。
①「特定地域」って、どんな地域のこと?
今回の改正で注目されている「特定地域」とは、中山間地域(ちゅうさんかんちいき:平野部と山間部の間にある地域)や人口減少が著しい(いちじるしい)地域のことを指します。
具体的には、
- 山あいの村や町
- 離島(りとう)
- 人口が急激に減少している市町村
などが対象になることが想定されています。
こういった地域では、介護サービスへのニーズ(必要性)が将来的に縮小(しゅくしょう)することが見込まれており、かつ今でも担い手(サービスを提供するスタッフ)が圧倒的に不足しています。



そのため、現行のルールのままでは事業所や施設を維持することが難しくなっているのです。
②人員基準の「緩和」って具体的にどういうこと?
現在の介護保険制度では、施設や事業所ごとに「このサービスをするには、これだけの人数・資格を持ったスタッフが必要ですよ」という基準が細かく定められています。
たとえば特別養護老人ホーム(特養)の場合、利用者3人に対して介護職員が1人以上配置されていることが原則です(いわゆる「3対1」の基準)。これは全国一律(いちりつ:すべての地域で同じ)に適用されているルールです。


しかし今回の改正案では、「特定地域」に指定された地域においては、この人員基準を一部緩和できる仕組みを作ることが検討されています。



つまり、「スタッフが少なくてもサービスを提供し続けてOK」という例外的なルールを設けることで、地域の介護を守ろうという発想です。
③訪問介護への「定額報酬」って何?
もう1つのポイントが、訪問介護への定額報酬の導入です。
現在の訪問介護の報酬(ほうしゅう:サービスを提供した対価としてもらえるお金)は、基本的に「訪問した回数」や「サービスを提供した時間」によって決まります。たとえば、1回の訪問で20分のサービスをしたら〇〇円、1時間のサービスをしたら△△円、という具合です。
しかし地方では、利用者さんの家が点在(てんざい:あちこちに散らばっている)しており、移動だけで大きなコストがかかります。訪問1件あたりの「移動時間」が長くなるほど、事業所としての効率が悪くなってしまう。これが地方の訪問介護事業所の経営を圧迫している大きな要因の1つです。



そこで、「特定地域」においては、訪問回数や時間に関係なく、一定の報酬を支払う仕組み(定額報酬)を導入することで、事業所の安定的な経営を支援しようというわけです。
現場への具体的な影響は?数字で確認しよう


「なんとなくわかったけど、実際に自分の仕事にどう関係するの?」という疑問を持つ方もいると思います。ここでは、現場への影響を具体的な数字を交えながら見ていきます。
どのくらいの地域が対象になる?
日本全国には約1,700の市区町村(しくちょうそん)があります。このうち、過疎地域(かそちいき:人口が著しく減少し、生活水準の維持が困難になった地域)に指定されている市区町村は、2024年時点で全国に885市町村あります。これは全市町村の約51%に相当します。



つまり、日本の市町村の約半数がこのような「過疎」の問題を抱えているということ。決して「遠い山の話」ではないのです。
介護職員の不足はどのくらい深刻?
厚生労働省(こうせいろうどうしょう)の推計(すいけい:データをもとに数値を予測すること)によると、2040年には介護職員が全国で約57万人不足するとされています。
特に地方・過疎地域では、都市部と比べて求人に対する応募数が極端に少ないことが現場感覚としてもよくわかります。



私の働く施設でも、求人を出してから採用まで平均3〜4ヶ月かかることが珍しくありません。
こうした現実を踏まえると、「人員基準をそのまま維持することで、かえって施設が閉鎖(へいさ)に追い込まれる」という逆説的な状況が生まれていることがわかります。人員が足りないからこそ、現実に合わせたルールが必要なのです。
訪問介護の移動コスト問題はどのくらいリアル?
地方の訪問介護事業所では、1件の訪問サービスに対して、移動時間だけで片道30分以上かかるケースが珍しくありません。
都市部であれば、1時間の勤務時間中に2〜3件の訪問をこなすことも可能ですが、地方では移動だけで1時間が過ぎてしまうことも。この移動時間は基本的に報酬に反映されないため、事業所の収益(しゅうえき:事業で得られるお金)を大きく圧迫します。
よくある疑問・注意点


「なんかいい話に聞こえるけど、大丈夫?」という不安の声もあると思います。現場目線でよくある疑問をまとめました。
Q1. 人員基準が緩和されたら、現場の負担が増えるんじゃないの?
ただし、今回の改正の前提(ぜんてい)として重要なのは、「人員基準を緩和しなければ、事業所・施設そのものが閉鎖になる」という現実があるということです。施設が閉鎖すれば、利用者さんは行き場を失い、残ったスタッフも仕事を失います。
つまり、「基準を緩和して何とか運営を続ける」か「基準を守って閉鎖する」かという二択(にたく)の中で、地域の介護を守るためのギリギリの選択と言えます。
もちろん、緩和されたからといって「もうスタッフを増やさなくていい」という話ではありません。引き続き採用・定着のための取り組みが事業所には求められます。現場の負担が増えすぎないよう、管理者(かんりしゃ)や施設長(しせつちょう)への働きかけも大切です。
Q2. 都市部の施設には関係ない話?
「私は都市部の施設に勤めているから関係ない」と思う方もいるかもしれません。
しかし、今回の制度変更は介護保険制度全体の見直しの一部であり、今後の改正が都市部にも波及(はきゅう:影響が広がっていくこと)する可能性は十分あります。制度がどう変わっていくかを把握しておくことは、どこで働く介護士にとっても重要です。
また、都市部に住んでいても、ご両親や親族が地方に住んでいるという方は多いはず。自分の家族が利用するかもしれないサービスの話でもあります。
Q3. この改正案はいつから施行(しこう:法律が実際に効力を持ち始めること)されるの?
政府は「今国会での早期成立」を目指しているとのことですので、今国会(2026年通常国会)での成立を目標にしていると考えられます。施行(実際に効力を発揮する時期)については、成立後に政令(せいれい:法律を具体化するための細かなルール)などで定められることになります。
最新情報は随時(ずいじ:その都度)確認するようにしましょう。このブログでも新しい情報が出次第、追ってお伝えします。
Q4. 定額報酬って、利用者さんの自己負担(じこふたん:サービス利用料のうち利用者が支払う分)が増えるの?
制度設計(せいどせっけい:制度の具体的な内容を決めること)はこれから詰められていく段階です。
ただし、介護保険制度の原則として、利用者の自己負担は原則1割(一定の所得以上の方は2割または3割)という仕組みは変わらないと考えられます。定額報酬の導入によって利用者負担が大幅に増えるような設計にはならないよう、引き続き注視(ちゅうし:注目して見守ること)が必要です。
まとめ:地方の介護を守るための「現実的な一歩」


今回の介護保険法改正案のポイントをまとめます。
- 過疎地・人口減少地域を「特定地域」として指定し、事業所・施設の人員基準を緩和する仕組みを導入
- 訪問介護に対して、訪問回数・時間によらない定額報酬を導入し、地方事業所の経営を安定させる
- 日本全体で885の市町村(全市町村の約51%)が過疎地域に指定されており、決して他人事ではない話
- 2040年には介護職員が全国で約57万人不足すると推計されており、制度の柔軟な対応が急務(きゅうむ:急いで対処する必要があること)
- 現場の負担増への懸念(けねん:心配)もあるが、「施設を存続させること」が利用者・スタッフ双方を守る前提



特養の現場で働いてきた私が感じるのは、「制度がどう変わっても、最終的に利用者さんを支えるのは現場の私たちだ」ということです。
今回の法改正は、まだ「案」の段階です。国会での審議を経て内容が変わることもあります。引き続き情報をキャッチしながら、現場での備えを進めていきましょう。
知って、トクしよう。
【出典】
Joint編集部「過疎地の介護維持へ新スキーム 法案決定 『特定地域』で人員基準緩和 訪問介護への定額報酬導入も」
https://www.joint-kaigo.com/
※本記事は2026年4月3日時点の情報をもとに作成しています。制度の詳細・施行時期については、今後変更される可能性があります。最新情報は厚生労働省や各都道府県の公式発表をご確認ください。












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