「診療報酬改定(しんりょうほうしゅうかいてい)って、うちの特養には関係ないんじゃないの?」
そう思っていた時期が、私にもありました。
でも、10年間この仕事を続けてきて気づいたのは、病院や診療所で起きた制度変更は、回り回って介護現場にも影響するということ。
室岡リハビリ職(PT・OT・ST)と連携しながら利用者さんのケアをしている私たち介護士にとって、他人事にはできないんです。
今回は「リハビリ総合実施計画書(りはびりそうごうじっしけいかくしょ)の様式が一部訂正された」「休日リハ加算(きゅうじつりはかさん)に算定できない患者が明確化された」というニュースを、現場の仲間にわかるようにざっくり解説します。
難しい話を難しいまま流すのはもったいない。一緒に「ふーん、そういうことか」ってなりましょう。
- リハビリ総合実施計画書の様式が2026年度改定で一部訂正された
- 休日リハ加算を算定できない患者の条件が明確化された
- 特養への直接の影響はないが退院後の利用者の状態変化に注意が必要
- 退院受け入れ時のアセスメントをより丁寧に行うことが求められる
そもそも「診療報酬改定」って何?ざっくりおさらい


まず超基本から確認します。
診療報酬(しんりょうほうしゅう)とは、病院やクリニックが患者さんに行った医療行為に対して、国から支払われる報酬のことです。「こういう処置をしたら何点」「このリハビリを提供したら何点」という形で、2年に1回改定されます。
私たち介護士が働く特養(特別養護老人ホーム)や老健(介護老人保健施設)は、診療報酬ではなく介護報酬(かいごほうしゅう)が主な収入源です。ただし、特に老健やデイケア(通所リハビリテーション)では、医療保険のルールも絡んでくるため、診療報酬改定の影響を受ける場面があります。
また、特養に入所している利用者さんが入院先の病院でリハビリを受けることもあります。その場合、病院側のリハビリのルールがどう変わるかは、利用者さんの回復具合や退院後のケアにも関わってきます。



だから「うちは関係ない」とは言えないんですよね。


今回の制度変更①:リハビリ総合実施計画書の様式が訂正された


「リハビリ総合実施計画書」って何?
これは、PT(理学療法士)・OT(作業療法士)・ST(言語聴覚士)などのリハビリ専門職が、「この患者さんにどんなリハビリをするか」「目標は何か」「どこまで回復を目指すか」をまとめた書類です。



介護施設でいうところの「個別機能訓練計画書(こべつきのうくんれんけいかくしょ)」に近いイメージを持ってもらえるとわかりやすいと思います。
どこが変わったの?
2026年度の診療報酬改定にあたって、この計画書の様式(ようしき)=書類のフォーマットが一部訂正されました。
具体的には、記載する項目の内容や表現が整理されています。「曖昧だった部分をより明確にした」というイメージです。
直接、私たち介護士が記入する書類ではありません。ただし、利用者さんが病院から退院してくるときに持ってくる書類の中に、この計画書が含まれる場合があります。退院時のサマリー(入院中の経過をまとめた書類)と一緒に届くこともありますね。
書式が変わることで、以前より情報が整理されてわかりやすくなる可能性があります。



「退院後にどんな機能訓練が必要か」を読み解くうえで、私たちにとってもプラスになりそうです。
今回の制度変更②:休日リハ加算の「算定できない患者」が明確化


「休日リハ加算」って何?
病院では、土日・祝日も含めてリハビリを提供すると、「休日リハビリテーション提供体制加算(きゅうじつりはびりてーしょんていきょうたいせいかさん)」、通称「休日リハ加算」という追加の報酬がもらえる仕組みがあります。
なぜこれが設けられているかというと、リハビリは毎日続けることが重要だからです。骨折や脳卒中(のうそっちゅう)の後は、特に発症から早い段階で集中的にリハビリを行うと回復に大きな差が出ます。土日だからとリハビリが休みになってしまうと、せっかくの回復のチャンスを逃してしまうんですね。
だから国は、「休日でもリハビリを提供する体制を整えている病院には、プラスの報酬を払いますよ」という制度を作っています。



これが休日リハ加算です。
今回、何が「明確化」されたの?
今回の改定では、「休日リハ加算を算定できない患者の条件」がより具体的に示されました。
つまり、「この状態の患者さんには、休日リハ加算をつけてはダメですよ」という線引きがはっきりした、ということです。
これまでは解釈がやや曖昧だったため、病院によって対応にばらつきがありました。今回の訂正で、ルールが全国統一に近い形で運用されるようになります。
算定できないのはどんなケース?
明確化されたポイントとして、主に以下のようなケースが「算定対象外」となります。
- 維持期・生活期(いじき・せいかつき)のリハビリを受けている患者:急性期(きゅうせいき)や回復期(かいふくき)を終えて、現状維持を目的としたリハビリを受けている段階の患者さんは、休日リハ加算の対象外になります。
- リハビリの必要性が低いと判断された患者:医師が「積極的なリハビリの適応なし」と判断している場合。
これは介護施設にどう関係するか?



退院してきたときの状態を確認しながら、私たちの施設での機能訓練計画をしっかり立て直す必要が出てくるかもしれません。
現場への具体的な影響:数字で考えてみよう


「ルールが変わりました」と言われても、ピンとこないですよね。もう少し具体的に考えてみましょう。
リハビリの”量”が変わる可能性
病院のリハビリは、診療報酬上、1日あたりの提供時間に上限が設定されています。たとえば脳血管疾患(のうけっかんしっかん)等リハビリテーション料(I)の場合、患者1人につき1日最大180分(3時間)まで算定できます。
また、在宅復帰・施設入所に向けた準備期間として、リハビリを行える日数にも制限があります。たとえば脳血管疾患の場合は発症から180日(約6ヶ月)が標準的な算定上限です(医師が必要と認める場合は延長も可能ですが、手続きが必要)。
「退院してくるタイミングで、以前より体力や動作能力が落ちている」というケースが今後増えるかもしれない。そのことを頭の片隅に入れておくだけで、受け入れ時のアセスメント(情報収集と評価)が変わってきます。
退院後の介護負担への影響
仮に、ある利用者さんが骨折で入院し、その後維持期に入ったとします。以前なら土日も含めてリハビリを週7日受けられていたのが、今後は平日5日間のみになる可能性があります。単純計算で週あたり2日分、月にすると約8〜9日分のリハビリが減ることになります。
この差は、退院後の歩行能力や日常生活動作(ADL:Activities of Daily Living)に影響します。介護士としては、「この人、入院前より転倒リスクが上がっているな」「排泄介助の量が増えそうだな」という視点で受け入れ準備をする必要があります。



現場で働く私たちにとって、入院前と退院後の状態差を丁寧に確認することの重要性がより高まると感じています。
よくある疑問・注意点


Q1. 特養に入っている利用者さんのリハビリには関係ある?
特養に入所中の方が施設内で受けるリハビリ(機能訓練)は、介護報酬の中でまかなわれており、診療報酬とは別の仕組みです。
ただし、入院先の病院でリハビリを受けている期間は診療報酬の対象になります。退院して施設に戻ってくる際の状態が変わってくる可能性があるという意味で、間接的な影響があります。
Q2. 老健やデイケアへの影響は?
老健(介護老人保健施設)の通所リハビリや、デイケア(通所リハビリテーション)は、介護保険を使いながらも医師の指示のもとでリハビリを提供する施設です。
これらの施設では、リハビリ計画書の内容が今回の改定によって変化する可能性があります。特にPT・OT・STと一緒に働いている介護士の方は、計画書のフォーマットが変わることを知っておくと、カンファレンス(ケア会議)でスムーズに話についていけます。
Q3. 「訂正」って、大きな変更じゃないの?
制度の根幹が変わるわけではなく、運用ルールの精度が上がったイメージです。
ただし、現場では「細かい修正」が思わぬ業務の変化につながることがあります。今後も改定情報は定期的にチェックしておくことをおすすめします。
Q4. この改定はいつから適用?
改定内容が通知された後、各病院・施設が対応を進めます。
私たち介護士は直接この改定を「適用する」立場ではありませんが、連携先の病院やリハビリ職員がどう動くかに注目しておくとよいでしょう。
現場で使えるポイント:退院受け入れ時に確認したいこと


今回の制度変更を踏まえて、退院してきた利用者さんの受け入れ時に確認しておきたいポイントをまとめます。
- 入院中のリハビリ内容と頻度を確認する:「週に何日、何時間リハビリを受けていたか」を退院サマリーや担当PTに確認しましょう。入院前より少なかった可能性があります。
- ADL(日常生活動作)の変化を細かくチェックする:「歩行はできるか」だけでなく、「どのくらいの距離を歩けるか」「手すりなしで立てるか」など、数字と具体的な場面で確認します。
- リハビリ総合実施計画書を取り寄せる:可能であれば、入院中に作成されたリハビリ計画書のコピーをもらいましょう。新しい様式に変わっていたとしても、基本的な情報は変わりません。
- 施設内の機能訓練計画を早めに見直す:退院後2週間以内に、機能訓練担当者と連携して計画を更新する習慣をつけましょう。この2週間は体力や動作能力が変動しやすい時期です。
- 転倒リスクアセスメントを最新の状態にする:入院前のリスク評価がそのまま使われているケースがよくあります。退院直後は必ず再評価してください。骨折後の再骨折が最も多いのは退院後3ヶ月以内という統計もあります。
制度を知ることで、ケアの質が上がる


「診療報酬の話なんて、介護士には関係ない」。
そう思っていた10年前の私に、今の私は言いたい。「関係ある。むしろ、知っているかどうかでケアの質が変わる」と。
今回の制度変更は、リハビリ職が直接対応する内容です。でも、その影響を受けるのは利用者さんであり、退院後にその利用者さんを受け入れるのは私たち介護士です。
「なんか入院前より動きが悪くなって帰ってきたな…」と漠然と感じるだけでなく、「2026年からリハビリの制度が変わって、維持期の休日リハが減った可能性がある。だから受け入れ時のアセスメントを丁寧にやろう」と考えられる介護士になれる。



それだけで、チームの中でのあなたの存在感は確実に変わります。
まとめ


今回の内容をざっくりおさらいします。
- 2026年度診療報酬改定で、リハビリ総合実施計画書の様式が一部訂正された
- 休日リハ加算を算定できない患者の条件が明確化された(維持期・生活期の患者などが対象外に)
- 特養に直接適用される変更ではないが、入院中の利用者さんのリハビリ量・質に影響する可能性がある
- 退院受け入れ時のアセスメントをより丁寧に行うことが、これからの介護士に求められる
- 制度を知ることは、利用者さんを守ることにつながる
難しい制度の話も、「自分の現場に置き換えたらどうなるか」を考えながら読むと、急に身近になりますよね。



このブログがその「翻訳機」になれたらうれしいです。
これからも一緒に勉強していきましょう。
知って、トクしよう。
【出典】
PT-OT-ST.NET「【診療報酬改定】リハビリ総合実施計画書の様式を一部訂正、休日リハ加算に算定できない患者を明確化」
https://www.pt-ot-st.net/












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