【現場目線で解説】保育施設が高齢者施設に転用できる?介護士が知っておきたい制度変更の話

「近所の保育園が閉まって、その建物がそのまま空き家になってる…」そんな光景、みなさんの地域でも見たことありませんか?

私は特養(特別養護老人ホーム)で働いて10年になりますが、ここ数年でじわじわと感じているのが「介護施設が足りない地域と、使われなくなった施設が増えている地域が、同じ場所にある」という現実です。

室岡

「あの空き建物、高齢者施設に使えたらいいのに」と思ったことは一度や二度じゃありません。

そしてついに、その「もったいない」を解消するかもしれない制度の見直しが動き出しました。2025年3月18日、こども家庭庁が「児童福祉施設の財産処分要件の緩和」を発表したんです。

難しそうなタイトルですよね。でも大丈夫。今日はこの制度変更が「介護の現場にどう関係するのか」を、同じ現場の仲間に話すつもりでざっくり解説します。

ざっくり解説:この記事で分かる事
  • 保育施設を高齢者施設に転用する際の補助金返納ルールが緩和される
  • 10年以上の施設は全国で高齢分野への転用が返納不要に
  • 人口減少地域なら10年未満でも一定条件のもとで返納不要に
  • 詳細はこれから厚労省と協議して決まる予定
目次

そもそもどんな制度変更なのか?背景と概要

まず「財産処分」って何?

「財産処分(ざいさんしょぶん)」とは、国や自治体の補助金(税金)を使って建てた施設を、別の用途に使ったり、誰かに譲ったり、貸したりすることを指します。

たとえば、国から補助を受けて建てた保育園を「やっぱり高齢者施設として使いたい」と言い出したとき、これまでは「補助金を国に返してください」というルールがありました。

これを「国庫返納(こっこへんのう)」といいます。

室岡

要するに「国のお金で作ったものを勝手に使い道変えるなら、お金返せ」という仕組みです。

これが壁になって、「子どもが減って保育園が余ってるのに、高齢者施設には転用できない」という状況が全国で続いていました。

なぜ今、変わるの?

背景には2つの大きな流れがあります。

①少子化・人口減少が加速している

2024年12月にこども家庭庁が公表した「保育政策の新たな方向性」の中で、人口が減っている地域では施設の統廃合(まとめたり廃止したりすること)や多機能化(1つの建物で複数の役割を持つこと)を計画的に進めると明記されました。

実際、日本の出生数は2023年に初めて70万人を下回り(72.7万人)、保育需要は都市部を除いて急速に縮小しています。一方、高齢者の数は2040年には約3,900万人に達すると言われています。

②厚生労働省も「柔軟な対応」を求めていた

厚労省の「2040年に向けたサービス提供体制等のあり方検討会」でも、国の補助金で建てた既存施設の財産処分について「もっと柔軟に対応できるようにすべき」という方向性が示されていました。

室岡

つまり、こども家庭庁と厚労省の両方から「このルール、変えましょう」という声が上がっていたわけです。

制度変更の具体的な内容

今回の見直し案は、大きく3つのポイントに分かれます。表にするとこんな感じです。

対象施設条件何が変わる?
運営10年以上の児童福祉施設(全地域)高齢分野への転用・譲渡・貸し付け補助金返納が不要になる(新たに追加)
運営10年未満の児童福祉施設(人口減少地域のみ)一定の条件あり補助金返納が不要になる(新設)
運営10年以上の児童福祉施設(人口減少地域のみ)施設の統廃合・こども食堂などへの転用補助金返納が不要になる(新設)
室岡

ちょっとわかりにくいので、もう少し噛み砕きましょう。

ポイント①:10年以上の施設は「高齢施設への転用」が全国でOKに

これまでは、10年以上運営してきた児童福祉施設を別の施設に転用する場合、補助金返納が不要なのは「こども・障害者分野の施設」に限られていました。

今回の見直しで、その対象に「高齢分野の施設」も加わります。つまり、10年以上動いてきた保育園を特養やデイサービスに転用するとき、国にお金を返さなくていい。

室岡

これは全国どこでも適用される変更です。

ポイント②:人口減少地域なら「10年未満」でも返納不要に

これが今回のかなり大きな変更点です。

これまでは、たとえば「5年前に建てた保育園だけど、子どもが激減してもう使えない。高齢者施設にしたい」という場合、10年経っていないので補助金を返納しなければなりませんでした。

それが今後は、人口が減少している地域に限り、一定の条件を満たせば10年未満でも返納不要になります。「一定の条件」の詳細はこれから厚労省と協議して決めるとのことですが、地域の実情に合わせた柔軟な運用が期待されています。

ポイント③:統廃合や「こども食堂」への転用も返納不要に

施設を取り壊す場合(統廃合・集約)や、法律で明確に定められていない施設——たとえば「こども食堂」などの地域福祉活動に転用する場合も、人口減少地域の10年以上の施設であれば返納不要になります。

「こども食堂」のような活動は法律上の「施設」として明確に位置づけられていないため、これまでは転用しようとしても手続きが困難でした。今回それが解消される見通しです。

介護の現場への具体的な影響

「制度の話はわかった。でも自分たちの仕事に何か関係あるの?」と思っている人、正直に言います。直接的にすぐ何かが変わるわけじゃないです。

室岡

でも、じわじわと大きな影響が出てくる可能性が高い変化です。

①介護施設が増える可能性がある

今、全国には2万か所以上の保育所等が存在します(令和5年時点)。このうち、特に地方では定員割れや閉園を検討している施設が少なくありません。

これまでは「補助金を返さないといけないから」という理由で転用をためらっていた運営法人も、今後は転用しやすくなります。

結果として、地域に新たな高齢者施設——デイサービス小規模多機能型居宅介護(しょうきぼたきのうがたきょたくかいご:自宅で暮らしながら通い・泊まり・訪問を組み合わせて使える介護サービス)などが生まれやすくなります。

特に過疎地域では施設不足が深刻で、「介護が必要なのに施設が遠すぎて使えない」という問題が実際に起きています。今回の変更はこの問題の解決に向けた一歩です。

②職場環境・雇用の変化

保育施設が介護施設に転用されるということは、新たな介護の職場が生まれるということでもあります。逆に言えば、保育士さんが介護分野に転職してくるケースも出てくるかもしれません。

現在の介護職員の平均年齢は約43歳(令和4年度介護労働実態調査より)。職員不足は業界全体の深刻な課題です。新しい施設が増えれば求人も増えますが、一方で「人をどこから連れてくるか」という問題も生じます。

今働いている私たちにとっては、転勤や施設の統廃合に巻き込まれる可能性もゼロではありません。

室岡

特に法人が複数の施設を運営している場合、「あの施設、どうなるんだろう」という話が出てきたとき、この制度変更が背景にあることを知っていると理解が深まります。

③地域との連携が広がる可能性

室岡

「こども食堂への転用が返納不要になる」というポイントも、地味に重要だと思っています。

近年、地域のこども食堂と高齢者施設が連携して「世代を超えた交流の場」を作る取り組みが増えています。今後、空き保育施設がそうした地域福祉の拠点になれば、介護施設がそこと連携できる機会も生まれます。

「施設の中だけで介護をする時代」から「地域全体で支える介護」へのシフトは、国の政策の大きな方向性でもあります。今回の制度変更はその流れを後押しするものとも言えます。

よくある疑問・注意点

Q. 「人口減少地域」って具体的にどこ?

今回の発表時点では、「人口減少地域」の具体的な定義はまだ確定していません。今後、こども家庭庁と厚労省が連携して詳細を検討するとされています。

一般的には、過疎地域自立促進特別措置法(かそちいきじりつそくしんとくべつそちほう)に基づく「過疎地域」や、人口が継続的に減少している自治体が対象になると予想されます。ただし、これは現時点での私の見立てであり、確定情報ではありません。詳細は今後の政府発表を待ちましょう。

Q. 今すぐ何か変わるの?

いいえ、今すぐではありません。

3月18日に示されたのはあくまで「見直し案」です。今後、具体的なルール(省令や通知)が整備されてから正式に施行されます。

ただ、方向性は明確に示されていますので、施設の運営法人がこれを見越して動き始めることは十分考えられます。「うちの法人が統廃合の話を始めた」「近くに新しい施設ができそう」という情報が出てきたとき、この制度変更と結びつけて考えると状況が見えやすくなります。

Q. 保育施設から転用された介護施設って、使いやすいの?

これは正直、現場目線で言うと「ケースバイケース」です。

保育施設は子どもの動線や安全に合わせた設計になっています。廊下の幅や天井の高さ、浴室設備など、介護施設として必要な仕様と異なる部分も多くあります。

転用にあたってはリノベーション(改装)が必要になるケースがほとんどで、その費用と手間も無視できません。「補助金を返さなくていい」になっても、「改装費用をどうするか」という別の課題が生まれます。制度変更はあくまで「入口のハードルを下げた」ものであり、万能ではありません。

Q. 私たち介護士は何かすることある?

すぐに「何かやること」はありません。

でも、こういう制度の動きを知っておくことで、職場の変化に戸惑わなくなります。

「なんで急に施設の話が出てきたんだろう?」「法人が保育事業と統合するって言い出した」そういうとき、「ああ、あの制度変更の流れか」と落ち着いて受け止められるかどうか。それだけで、現場の精神的な余裕が変わってきます。

室岡

知識は守りになります。

まとめ:「空き施設のもったいない」が変わるかもしれない

今回の制度変更を整理するとこうなります。

  • 国の補助金で建てた保育施設を高齢者施設に転用する際、補助金を返さなくていいルールが拡大される
  • 10年以上の施設は全国で高齢分野への転用が返納不要に(新たに追加)
  • 人口減少地域なら10年未満でも、一定条件のもとで返納不要になる(新設)
  • こども食堂など地域福祉活動への転用も、人口減少地域の10年以上施設で返納不要に(新設)
  • 詳細はこれから厚労省と協議して決まる。今すぐ何かが変わるわけではない

10年現場にいると、「いい制度の話を聞いても、なかなか現場には届かない」という経験を何度もしてきました。でも今回は、少子化・高齢化という避けられない波が重なって、制度が現実に追いつこうとしている変化です。

室岡

「使われなくなった保育園が、おばあちゃんのデイサービスになった」そんな未来が、あなたの地域でも起きるかもしれません。

難しい話を「知っているかどうか」で、現場の受け止め方がまるで変わります。難しいニュースも、ざっくり理解してトクしましょう。

知って、トクしよう。


【出典】
福祉新聞Web「児童福祉施設の財産処分要件を緩和 補助金返納なしで高齢施設への転用も可能へ」
https://fukushishimbun.com

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この記事を書いた人

「結局、給料いくら上がるの?」に答える介護士向け情報ブログ。厚労省の発表や制度改定を現場10年目がざっくり翻訳。知るだけでトクする介護情報を毎日更新中。

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