「退院できない子どもたち」の話、介護士として知っておきたいこと【医療的ケア児の社会的入院問題】

「医療的ケア児」って言葉、最近よく耳にするようになりましたよね。

でも正直なところ、「小児科や病院の話でしょ?特養の自分には関係ないかな…」って思っていませんか?

私も最初はそう思っていました。でも今回のニュースを読んで、これは介護の現場にいる私たちにとっても、決して他人事じゃないと感じたんです。

室岡

特養の介護士・室岡です。今日は「医療的ケア児の社会的入院問題」について、現場目線でざっくりわかりやすくお伝えします。難しい話ですが、読み終わったときに「あ、なんとなくわかった」と思えるように書きます。最後まで付き合ってください。

この記事を読めば、こんなことがわかります👇

この記事で分かる事
  • 医療的ケア児の社会的入院問題とは何か
  • 調査でわかった実態の数字
  • 議連が提言する3つの解決策
  • 介護士として知っておくべきつながり

目次

1. 「退院したくてもできない子ども」が日本中にいる

まずは、今回のニュースの核心から話しましょう。

2026年3月18日、衆議院第1議員会館で「超党派医療的ケア児者支援議員連盟」という国会議員のグループが会議を開きました。野田聖子さんが会長を務めるこの議連(ぎれん:複数の政党の議員が集まってつくる勉強会のようなグループ)は、医療的ケアが必要な子どもたちへの支援をよりよくするための法律改正に向けて、継続的に議論を重ねています。

今回のテーマは、「社会的養護(しゃかいてきようご:親がいない、または親と一緒に暮らせない子どもを社会全体で育てる仕組み)が必要な医療的ケア児が、地域に帰れずに病院に長期入院し続けている問題」です。

「医療的ケア児」とは、日常的に喀痰吸引(かくたんきゅういん:口や喉にたまった痰を機械で吸い出すケア)や経管栄養(けいかんえいよう:口から食事ができないため、チューブを使って栄養を直接胃や腸に届けるケア)などが必要な子どもたちのことです。

室岡

私たち介護士にとって、喀痰吸引や経管栄養は日々の業務でおなじみですよね。でもその対象が「高齢者」ではなく「子ども」で、しかも「帰る家がない」「地域に受け入れ先がない」という状況に置かれているとしたら、どう感じますか?

2. そもそもどんな問題なのか

調査からわかった「衝撃の数字」

今回の議連の会議では、ある調査の中間まとめが報告されました。その内容が、非常に具体的でした。

調査対象は全国2458病院。有効回答率は28%(約688病院が回答)。

結果として、小児病床のある1病院あたり平均0.7人の「長期入院児」がいることがわかりました。

「0.7人って少なくない?」と思った方、ちょっと待ってください。これ、あくまで「平均」です。小児病床を持つ病院は日本全国に何百とありますから、合計すると相当な人数になります。

さらに詳しく見ると:

  • 長期入院児の7割が医療的ケアを必要としていた
  • そのうち重症心身障害児(じゅうしょうしんしんしょうがいじ:重い知的障害と重い身体障害が重なっている子ども)以外の医療的ケア児は85例
  • その85例のうち、59例(約7割)は医学的に見ると退院できる状態だった

ここが一番大事なポイントです。

医学的には退院できる。でも、退院できない。

室岡

なぜか? 「家庭状況」と「地域の支援体制不足」が原因です。

「家族がいない」ことを想定していない制度

調査を担当した前田浩利医療法人財団はるたか会理事長は、こう指摘しています。

「数十年前は医療的ケア児が地域で暮らすことは考えられていなかったので仕方ないが、家族不在を想定していない制度設計になっている」

室岡

これ、すごく核心をついた言葉だと思います。

今の制度では、医療的ケアを在宅(ざいたく:家庭での生活)で行う場合、基本的には「家族」がその担い手になることが前提とされています。たとえば、喀痰吸引は本来、医師や看護師などの医療資格を持つ人しか行えません。でも「家族」だけは例外的に実施が認められています。

介護士の私たちが喀痰吸引を行うには、「喀痰吸引等研修」という研修を修了して、都道府県への登録が必要なのも、この制度の一部ですよね。

ところが、社会的養護が必要な子ども、つまり「家族がいない」「家族と暮らせない」子どもの場合、その「家族」の代わりを誰が担えるのか、制度上の答えがないんです。

室岡

里親(さとおや:家庭で養育できない子どもを一定期間預かって育てる人)が医療的ケアを行うことも、現状では明確に認められていない。だから、医療的ケアが必要な子どもは、里親家庭にも、多くの施設にも受け入れてもらえない。結果として、退院できても退院先がない、という状況が生まれているわけです。

3. 議連はどんな解決策を提言したのか

今回の議連では、いくつかの具体的な提言がなされました。現場の視点でひとつひとつ整理してみましょう。

①里親も医療的ケアを実施できるようにする

現在、家族には例外的に医療的ケアの実施が認められています。この「例外」を里親にも適用しよう、という提言です。

これが実現すると、医療的ケアが必要な子どもでも里親家庭で暮らせる可能性が広がります。「病院しかいられない」という状況から、「家庭的な環境で育つ」という選択肢ができるわけです。

②「社会的入院」の定義と判断基準を明確にする

社会的入院(しゃかいてきにゅういん:医学的には入院の必要がないのに、社会的な事情により病院にとどまり続けること)という状態は、実はきちんとした定義がありませんでした。

「この子は社会的入院だ」と判断する基準がないと、問題を把握することも、支援につなげることも難しくなります。まず定義を明確にして、実態を正確に把握しようというわけです。

これは高齢者介護の世界でも似たような話があります。「本当は施設に入れる状態じゃないのに、家族が看られないから施設に入っている」という方、見たことありませんか?そういう状況と構造はよく似ています。

③受け皿となる施設への加算を設ける

加算(かさん:介護報酬や診療報酬において、基本の報酬に上乗せして支払われるお金)を設けて、医療的ケア児を受け入れる施設を財政的に支援しようという提言です。

室岡

正直、現場の人間としてはここが一番現実的な話だと思います。「受け入れたいけど、人手も設備も足りない」という施設は全国にたくさんあるはずです。加算がなければ、受け入れれば受け入れるほど経営が苦しくなる。そこをお金で後押ししようということです。

実践例:千葉県の「すくすくハウス」

今回の議連では、千葉県にある「すくすくハウス」(社会福祉法人ワーナーホーム)という医療的ケア対応複合施設の大久保夏樹統括施設長が、実際に長期入院から地域移行(ちいきいこう:施設や病院での生活から、地域の中での生活に移ること)した医療的ケア児の事例を紹介しました。

具体的な事例の内容は報道では詳しく紹介されていませんが、「できている場所がある」という事実は大きいと思います。制度や体制が整えば、地域での生活は可能だということの証明です。

4. 現場の介護士として「どう関係するのか」を考える

「でも室岡さん、私たちは特養や老健(ろうけん:介護老人保健施設)で働いているし、子どもの話は正直ピンとこない…」という声が聞こえてきそうです。

室岡

でも、この問題は私たちの仕事に3つの点で深くつながっています。

①喀痰吸引・経管栄養は「私たちの技術」の話でもある

この問題の核心は、「誰が医療的ケアを担えるか」という話です。介護士である私たちは、研修を受けることで喀痰吸引と経管栄養ができるようになりますよね。

現在、この制度は主に高齢者介護の現場に向けて設計されています。でも今後、医療的ケア児の地域移行が進めば、障害児・者の施設や地域の訪問介護の現場でも、こうした技術を持つ介護士のニーズはさらに高まります。

室岡

「喀痰吸引等研修を受けておいてよかった」という日が来るかもしれません。まだ研修を受けていない方は、ぜひ検討してみてください。

②「社会的入院」は高齢者の世界にも存在する

先ほども少し触れましたが、医学的には入院や施設入所の必要がないのに、家庭の事情や地域の支援体制の不備によって施設にとどまり続けている高齢者も、現実にいます。

今回の子どもの問題をきっかけに、「社会的入院・社会的入所」全体の議論が進む可能性があります。

室岡

そうなれば、私たちが働く高齢者介護の現場にも影響が出てくるかもしれません。

③「制度の隙間にいる人たち」に目を向けることの大切さ

今回のニュースを読んで、私が一番強く感じたのはここです。

医療的ケアが必要で、かつ家族がいない子ども。これは、現行の制度が想定していなかった存在です。だから、誰も積極的に動かず、結果として病院に「置き去り」になってしまっている。

これは子どもの話だけじゃありません。介護の現場でも、「どこにも繋がれていない人」「制度の隙間に落ちてしまっている人」を目にすることは珍しくないはずです。

室岡

「うちの施設の対象外だから」で終わらせず、「この人にとって何が必要か」を考え続ける。それが、私たち介護士の本当の仕事なんじゃないかと、このニュースを読みながら改めて思いました。

5. よくある疑問・注意点

Q. 「医療的ケア児支援法」ってどんな法律?

2021年(令和3年)に成立した「医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律」のことです。

医療的ケア児が医療・福祉・教育などの複数のサービスを一体的に受けられるよう、国や地方自治体に支援の責任があることを定めた法律です。今回の議連は、この法律をさらに改正するための議論を進めています。

Q. 今回の議論はいつ法律に反映されるの?

現時点では「議連での検討段階」です。

法律改正の具体的なスケジュールはまだ明らかになっていません。ただ、超党派(複数の政党が協力している)での議論であること、こども家庭庁・厚生労働省も意見交換に参加していることから、着実に前に進んでいると見ていいと思います。

Q. 特養や老健で働く介護士が今すぐ何か変わることはある?

現時点では、直接的に業務が変わることはありません。

ただ、将来的に障害児・者の支援が地域で広がっていく中で、介護士の活躍の場は高齢者以外にも広がっていく可能性があります。喀痰吸引等研修の取得、相談支援に関する知識の習得など、今からできる準備はあります。

Q. 「社会的入院」って、施設にも責任があるの?

これは難しい問いです。受け皿がないから仕方なく入院が続く、というケースでは、個々の施設に責任があるというより、制度全体の問題です。

ただ、今後制度が整い、加算もついてくる中で「受け入れられる体制を整えること」が施設に求められるシーンは増えてくるかもしれません。

まとめ:「自分には関係ない」と思っていた話が、実はつながっていた

今回のニュースをざっくりまとめると、こうなります。

  • 全国2458病院を対象にした調査で、小児病床1病院あたり平均0.7人の長期入院児がいることがわかった
  • 長期入院児の7割が医療的ケアを必要としており、そのうち85例は重症心身障害児以外の医療的ケア児
  • その85例のうち59例(約7割)は医学的に退院可能だが、家庭や地域の事情で退院できない
  • 現行制度は「家族がいる」ことを前提にしており、社会的養護が必要な子どもへの対応が不十分
  • 里親への医療的ケア認可、社会的入院の定義明確化、受け皿施設への加算などが提言されている

今回の「医療的ケア児の社会的入院問題」は、子どもの福祉の話であり、医療の話であり、そして私たちが毎日向き合っている「喀痰吸引」「経管栄養」「制度の隙間にいる人」の話でもあります。

室岡

知っているだけで、視野が広がる。視野が広がると、目の前の利用者さんへの関わり方も、少し変わってくる。そう信じて、このブログを書き続けています。

今日も読んでくれてありがとうございました。

知って、トクしよう。


【出典】
福祉新聞Web「社会的養護の必要な医療的ケア児の長期入院 超党派議連が受け皿不足の課題を検討へ」
https://fukushishimbun.com

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この記事を書いた人

「結局、給料いくら上がるの?」に答える介護士向け情報ブログ。厚労省の発表や制度改定を現場10年目がざっくり翻訳。知るだけでトクする介護情報を毎日更新中。

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