「最近、施設の看護師さんが忙しそうで、なんか申し訳ない…」「うちの施設、看護師さんの確保がギリギリで不安…」そんなふうに感じている介護士さん、けっこう多いんじゃないでしょうか。
私も特養(特別養護老人ホーム)で働いてきて、その間に看護師さんの人数が減ったり、夜間対応が変わったり、ヒヤヒヤする場面を何度も経験してきました。
そんな中、国が動き始めました。厚生労働省が「2040年に向けた看護職員の養成・確保の在り方に関する検討会」という会議を立ち上げたんです。
室岡看護師の話でしょ?介護士の私には関係ない?」——いや、これが大アリなんです。今日はこの検討会がどんなものか、そして私たち介護士の現場にどんな影響があるのかを、できるだけわかりやすく伝えていきます。
- 2040年問題とは高齢者が増え働き手が減る問題のこと
- 看護師不足が介護施設にも深刻な影響を与える
- 介護士の業務範囲が広がる可能性がある
- チームケアの連携がより重要になる




そもそも「2040年問題」って何?検討会が立ち上がった背景





まず前提として「2040年問題」について話させてください。
2040年というのは、日本の人口動態(じんこうどうたい:人口の増減や年齢構成の変化のこと)において、非常に大きな転換点になると言われている年です。具体的に数字で見てみましょう。
- 2040年には、高齢者(65歳以上)の人口が約3,900万人に達すると予測されています。
- 一方で、生産年齢人口(15〜64歳の働ける世代)は2020年比でおよそ1,100万人減ると言われています。
- 介護や医療を必要とする人は増えるのに、支える側の人手はどんどん減っていく——これが「2040年問題」の核心です。
そしてこの問題、看護師の世界でも深刻です。
現在、日本には約173万人の看護師・准看護師が働いていますが、2040年には最大で約60万人以上が不足するという試算も出ています。特に介護施設や在宅医療の現場では、病院と比べて給与水準が低いこともあり、看護師の確保が今でも難しい状況が続いています。
検討会では何が話し合われるの?
この検討会では、大きく分けて以下のようなテーマが議論される予定です。
- 看護師の養成数(学校で育てる数)をどう見直すか
- 看護師が働き続けられる環境をどう整えるか
- 介護施設や在宅など、病院以外の現場で看護師を確保するための方策
- 看護師の役割分担・タスクシフト(業務の移管)の推進



特に最後の「タスクシフト(業務の移管)」は、私たち介護士に直接関わってくる話です。これは後ほど詳しく説明します。
現場への具体的な影響——介護士ごとに何が変わるの?





「国の検討会が始まった」と言われても、現場レベルでどう影響するのかがわからないと、なかなか実感できないですよね。私も最初はそうでした。でも調べていくうちに「これ、他人事じゃないぞ」と感じるようになりました。
①看護師不足が加速すると、介護士の業務範囲が広がる可能性がある
現在、特養などの介護施設では、医療行為(いりょうこうい:医師や看護師にしか許可されていない処置)は看護師が担っています。しかし看護師が足りなくなると、「介護士でもできる範囲を広げよう」という議論が必ず出てきます。
実際にすでに起きている変化として、2012年から介護士によるたんの吸引と経管栄養(けいかんえいよう:鼻や胃にチューブを入れて栄養を送ること)の実施が、一定の研修を受ければ認められるようになっています。



今後、この「介護士ができる医療的ケア(いりょうてきけあ)」の範囲がさらに広がる可能性があります。これは責任が増えることでもあるので、私たち自身がしっかりアンテナを張っておく必要があります。
②夜間の看護体制がさらに薄くなるリスク
特養の夜間帯、「何かあったら看護師に電話できる体制」になっている施設が多いと思います。私の施設もそうです。でも看護師が減ったり、オンコール(電話当番)に対応できる人材が確保できなくなったりすると、この体制が崩れるリスクがあります。
実際、全国老人福祉施設協議会(全老施協)の調査によると、特養における看護師の充足率は平均で約80〜85%程度にとどまっているという報告があります。つまり、5施設に1施設は看護師が足りていない状態で運営されているということです。
③チームケアの在り方が変わる——看護師との連携がより重要になる
看護師が減る中で質の高いケアを維持するためには、「看護師にしかできないこと」と「介護士でもできること」を明確に仕分けして、チームとして効率よく動くことが求められます。
これは介護士にとってはチャンスでもあります。看護師の専門知識を学ぶ機会が増えたり、より高度な判断を求められる場面が増えたりすることで、介護士としてのスキルアップにつながるからです。



一方で「業務が増えるだけで給料が変わらない」というパターンにならないよう、私たち自身が声を上げることも必要だと思っています。
④採用競争が激化して施設の運営にも影響が出る
看護師が減れば、各施設が取り合いになります。給与を上げたり、待遇を改善したりして看護師を確保しようとする施設が増えると、施設全体の人件費が上がります。
そのしわ寄せが介護士の処遇(しょぐう:給与や福利厚生などの待遇のこと)に影響しないとは言い切れません。施設の経営状況を把握しておくことも、今後はより重要になってくると思います。
よくある疑問・注意点——「え、これってどういうこと?」に答えます


Q1:「検討会が始まっただけ」でしょ?すぐ変わるわけじゃないよね?
ただし、過去の経験から言うと、こういった検討会の議論は3〜5年後の制度改定に直結することが多いです。たとえば、介護報酬(かいごほうしゅう:国から介護施設に支払われるお金)は3年ごとに改定されますが、その内容は事前の検討会で大枠が決まっています。
「今すぐ変わらないから関係ない」ではなく、「3年後・5年後にどう変わるかを今から把握しておく」という姿勢が大切です。
Q2:介護士が医療行為をするようになったら、責任問題はどうなるの?
現状では、介護士が医療的ケアを行うには「認定特定行為業務従事者(にんていとくていこういぎょうむじゅうじしゃ)」という研修を修了することが必要で、その行為の範囲も法律で厳密に決まっています。資格なしで勝手に範囲を広げることはできません。
今後、業務範囲が広がる場合も、必ず「研修の受講」「一定の資格取得」「施設内での手順の整備」がセットになるはずです。「知らないうちに責任だけ増えていた」という事態にならないように、施設のルール整備をしっかり確認することが重要です。
もし施設側から「資格も研修もなしにやってほしい」と言われたら、それは明確にNGです。そういった場面では、毅然と断る知識を持っておくことが自分を守ることになります。
Q3:介護士はこの検討会に関与できないの?
ただ、介護の現場を代表する団体(公益社団法人日本介護福祉士会など)が意見を出す機会はあります。
私たち一人ひとりにできることは、こういった議論があることを知り、自分の施設の職場環境や労働条件について問題意識を持ち続けることです。制度は現場の声が積み重なって変わっていくものだと、10年働いてきて実感しています。
Q4:「准看護師(じゅんかんごし)」はどう関係するの?
今回の検討会では、准看護師の制度の在り方(廃止するか継続するかなど)も議題になる可能性があります。介護施設で働く准看護師さんが多い施設では、今後の動向を特に注意して見ておく必要があります。
まとめ——今日から意識しておきたいこと


今回の「2040年に向けた看護職員の養成・確保の在り方に関する検討会」は、介護士にとっても無関係ではない、非常に重要な動きです。最後に要点を3つにまとめます。
- 2040年には看護師が最大60万人以上不足するという試算がある。介護施設での看護師確保はさらに厳しくなる可能性が高い。
- 介護士の業務範囲が広がる議論が加速する可能性がある。医療的ケアに関する知識・資格を今のうちに整えておくことが、自分のキャリアを守ることになる。
- この問題は「3〜5年後の制度改定」に直結する。今すぐ変わらなくても、情報を追い続けることが大切。
介護の現場は、制度が変わるたびに「え、また?」となることが多いです。私もそうでした。でも10年続けてわかったのは、「変化を先に知っていた人」が一番ラクに乗り越えられるということです。



難しい話を難しいまま放置しない。ざっくりでもいいから知っておく。それがこのブログの使命だと思っています。
一緒に現場を生き抜いていきましょう。
知って、トクしよう。
📎 出典・参考情報
・厚生労働省「第1回2040年に向けた看護職員の養成・確保の在り方に関する検討会の開催について」
🔗 https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-isei_335126_00002.html
・厚生労働省「看護職員需給推計について」
🔗 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_17271.html
・内閣府「令和5年版高齢社会白書」
🔗 https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/index-w.html







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