【現場目線で解説】施設に「木材」を使う時代が来た?福祉施設の木造化がもたらすこと

「施設が古くなってきたな…」「利用者さんにとってもっと過ごしやすい環境にしたい」そう思っている介護士のみなさん、こんにちは。特養介護士・室岡です。

室岡

今回紹介するのは、介護や障害福祉の現場にじわじわと関係してくる「施設の木造化」というテーマです。「え、木造?そんな話、自分には関係ない?」と思った方、ちょっと待ってください。

実は、福祉施設の建て替えや新築に「木材を積極的に使おう」という国の動きが、静かに、でも確実に広がっています。和歌山県では社会福祉法人が県と正式に「木材を使います」という協定を結んで、施設の建て替えに踏み切るニュースが出ました。

今日はこのニュースをきっかけに、「施設の木造化って何なの?」「現場の私たちに何か関係あるの?」という疑問に、できるだけわかりやすくお答えします。難しい法律の話も出てきますが、全部かみ砕いてお伝えしますので、最後まで読んでいってください。

この記事を読めば、こんなことがわかります👇

この記事で分かる事
  • 福祉施設の木造化とはどういう動きか
  • 都市の木造化推進法の概要
  • 利用者・スタッフへの具体的な影響
  • 施設の建て替えで使える補助金の考え方
目次

そもそも何があったの?ニュースの概要をざっくり説明

今回のニュースの主役は、和歌山県白浜町にある社会福祉法人「紀伊の郷(きいのさと)」です。この法人は1986年7月に設立された、歴史のある福祉法人です。

運営する障害者支援施設「日置川みどり園」では、重度の障害を持つ方々40人が生活しています。施設の中には日中活動のための作業棟が2棟あって、入居者さんたちはそこで日中を過ごしています。

ところが、施設がだいぶ古くなってきた。そこで建て替えが決まったわけですが、そのタイミングで和歌山県と「建築物木材利用促進協定」を締結(正式に約束を交わすこと)したというのが今回のニュースです。

2025年2月20日に協定を結び、2026年度中に建て替え工事をスタート。完成・運用開始は2027年度の予定です。建て替えの内容は、2棟ある作業棟を解体して、駐車場のスペースをまるごと活用した木造2階建て施設を新たに建てるというものです。その広さはなんと延べ床面積約2400平方メートル。かなり大きな施設です。

室岡

使われるのは県産ブランド材「紀州材(きしゅうざい)」。和歌山県が誇る地元の木材ブランドです。

「都市の木造化推進法」って何?背景にある国の方針

室岡

ここで少しだけ、この動きの背景にある法律の話をさせてください。難しくないように説明しますね。

今回の協定は「都市(まち)の木造化推進法」という法律がベースになっています。正式名称は「脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律」といいます(長い…)。

簡単に言うと、「建物にもっと木材を使うことで、環境にやさしい社会をつくっていこう」という法律です。

この法律のもとでは、企業や法人が国や地方自治体と「木材利用促進協定」を結ぶことができます。協定を結ぶことで、「この施設は積極的に木材を使って建てます」という姿勢を公式に示すことができるわけです。

和歌山県でこの協定を結んだのは、今回の紀伊の郷が16件目。社会福祉法人としては、太陽福祉会・県福祉事業団・南紀のぞみ会に続いて4法人目となります。

室岡

「え、なんで福祉施設が木材?」と思うかもしれませんが、これには大きな流れがあります。

かつて日本では、学校や病院、福祉施設などの「公共的な建物」は火災のリスクを考えて、鉄筋コンクリート(RC造)や鉄骨造が主流でした。木造は「火に弱い」「古いイメージ」として敬遠されてきた歴史があります。ところが、近年の建築技術の進歩で、木造でも十分な耐火性能(火に耐える性能)を持たせることが可能になってきました。

さらに、木材は育つ過程でCO2(二酸化炭素)を吸収するため、環境にやさしい素材として注目されています。国としても「福祉施設に木材をどんどん使おう」という方向性を明確に打ち出しているわけです。

現場の介護士・支援員に関係あること3つ

「でも、建物のことなんて経営者や施設長が決めること。現場の自分には関係ないのでは?」という声が聞こえてきそうです。でも、実はそうじゃない部分もあるんです。施設の構造や環境は、私たちの仕事にも、利用者さんの生活にも直結します。

①利用者さんの「生活の質」に関わる

室岡

木材を使った施設って、実際どんな環境になるのでしょうか。木の素材には、こんな特徴があります。

  • 室内の湿度(しつど)を自然に調整してくれる
  • 適度な弾力性があり、転倒時の衝撃をやわらげる効果がある
  • 木の香り・温かみが心理的なリラックス効果をもたらす
  • 冷暖房効率が上がりやすく、施設内の温度が安定しやすい

特に、高齢者や重度障害者の方が長時間過ごす施設では、このような「環境の質」が体調にも影響します。コンクリートの無機質な空間より、木の温もりが感じられる空間のほうが、利用者さんが落ち着いて過ごせるというデータもあります。

今回の日置川みどり園も「入居する利用者の特性を踏まえた構造になる」と理事長がコメントしています。重度障害を持つ40人の方々が毎日を過ごす場所が、より安心できる木の空間になるというのは、支援の質という意味でも大きな意味があります。

②働く環境が変わる可能性

介護士や支援員として、毎日長時間を過ごす職場の環境は、私たち自身の体や心にも影響します。木材を多く使った施設は、音の反響が少なく静かで落ち着いた空間になりやすいと言われています。

また、床材に木材(またはそれに近い素材)が使われている場合、コンクリートの床と比べて足への負担が軽減される可能性があります。1日8時間、多い人では10時間以上立ち仕事をしている私たちにとって、これは地味ですが大事なポイントです。

さらに、新しい施設になることで、動線(どうせん:スタッフや利用者さんが移動するルート)の改善や、設備の最新化も期待できます。古くなった施設では、入浴設備や移乗(いじょう:ベッドや車椅子への乗り移り)のための設備が老朽化していることも多い。

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建て替えはそうした課題をまとめて解決するチャンスでもあります。

③施設の建て替えは「情報収集のタイミング」

自分の施設が建て替えや大規模改修を検討している場合、「木造化」を選択肢に入れることで、補助金や助成制度が使えることがあります。

今回の協定のような「木材利用促進協定」を結ぶことは、費用面でのメリットがある場合もあります。地域によって異なりますが、地元産木材(ちいきさんもくざい)の利用に補助が出る都道府県もあります。

室岡

現場の私たちが「建て替えの補助金」まで調べるのは難しいかもしれませんが、「こういう制度があるらしいよ」と上に伝えるだけでも価値があります。現場の声が施設の方針に影響することは、決して珍しくありません。

よくある疑問・注意点

Q1. 木造の施設って、火事のとき大丈夫なの?

これは一番よく出る疑問だと思います。「木造=燃えやすい」というイメージは昔の話で、現代の木造建築は建築基準法(けんちくきじゅんほう:建物の安全基準を定めた法律)により、耐火・防火の基準を満たすことが義務付けられています。

特に社会福祉施設のような「多くの人が集まる建物(特殊建築物)」は、より厳しい基準が適用されます。技術的には、木材の表面を燃えにくい素材でコーティングしたり、構造的に燃え広がりにくい設計にしたりすることで、鉄筋コンクリートと同等以上の耐火性能(たいかせいのう)を持たせることが可能です。

今回の日置川みどり園の建て替えも、当然そうした基準に沿って設計・建築されますので、火災リスクという点で「木造だから危険」ということはありません。

Q2. コストはかかるの?

地域によっては、地元産木材を使うことで建築コストが上がる場合もあります。

ただし、前述のとおり補助金や助成が使える場合もありますし、長期的なランニングコスト(光熱費など)が下がるケースもあります。

今回の和歌山県の場合は「紀州材」という地元ブランド材を使うことで地域経済にも貢献できるという側面もあります。施設の建設コストと、地域への貢献・利用者さんの環境改善を合わせてトータルで考えるのが正しい見方です。

Q3. 「協定を結ぶ」と何かいいことがあるの?

木材利用促進協定を締結(ていけつ)することで、行政から技術的なアドバイスや情報提供を受けやすくなったり、広報面での支援が受けられたりするメリットがあります。

また、「地域の森林資源を守っている法人」というイメージが地域社会での信頼につながることも。採用活動や地域連携においてもプラスに働く可能性があります。

Q4. 自分の施設が老朽化しているとき、どうすればいい?

まず、施設の老朽化に気づいたことやその具体的な状況(「床のきしみが気になる」「設備が古くて使いづらい」など)を記録して、上司や施設長に伝えることが大切です。

建て替えや改修には多額の費用と時間がかかりますが、「現場からの声」が経営判断を動かすきっかけになることは十分あります。また、都道府県や市区町村の社会福祉担当部署に相談することで、補助金情報を入手できる場合もあります。

特養の室岡が思うこと

私が特養で働き始めたころ、施設はまだ建て直してから20年も経っていない「新しい建物」でした。でも今は、あちこちにガタが来ています。廊下の床が沈む場所があったり、風呂場の換気が弱くてカビが出やすくなったり。毎日そこで仕事をしている身としては、「早く直してほしい」という気持ちが正直あります。

でも一方で、「建て替えってどれだけお金がかかるんだろう」「経営的に可能なのか」という不安もあります。今回のニュースで、社会福祉法人が行政と協定を結んで、地元の木材を使って施設を建て直すという事例を知ったとき、「こういうやり方もあるんだ」と少し希望を感じました。

室岡

利用者さんが毎日を過ごす場所は、その人の「家」です。私たちが仕事をする場所は、単なる職場ではなく、誰かの「生活の場」でもある。その環境を良くするために、建物の話も「他人事じゃない」と私は思っています。

特に、これから施設の建て替えや改修を控えているところで働いている方には、「木造化」という選択肢を知っておくことで、会議や話し合いの場で意見を言える場面が増えるかもしれません。

まとめ

今回のポイントをおさらいします。

  • 和歌山県の社会福祉法人「紀伊の郷」が県と「木材利用促進協定」を締結。施設建て替えに地元産「紀州材」を活用する。
  • 2026年度中に工事開始、2027年度に運用開始予定。新施設は木造2階建て・延べ床面積約2400平方メートル。
  • この動きは「都市の木造化推進法」という国の方針に沿ったもので、福祉施設にも木材活用の波が来ている。
  • 木造施設は、利用者さんの生活環境の向上・働く側の労働環境改善にもつながる可能性がある。
  • 火災リスクについては、現代の建築技術と法規制で十分な安全性が確保できる。
  • 自分の施設の老朽化に気づいたら、現場からの声として上に伝えることが大切。

施設の建て替えや木造化は、「自分には関係ない上の人たちの話」に見えるかもしれません。でも、利用者さんの生活の場、そして自分たちの職場の話は、私たち現場の人間にとって「知っておく価値がある情報」です。

室岡

ちょっと難しそうな制度や法律でも、「こういう流れがある」と知っておくだけで、会話が変わったり、提案ができたりするものです。

知って、トクしよう。


📰 出典:福祉新聞Web「社会福祉法人紀伊の郷が和歌山県と木材利用協定 施設建て替えで紀州材活用」
https://fukushishimbun.com

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この記事を書いた人

「結局、給料いくら上がるの?」に答える介護士向け情報ブログ。厚労省の発表や制度改定を現場10年目がざっくり翻訳。知るだけでトクする介護情報を毎日更新中。

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