「なんで隣の市と給料が違うの?」「都内に転職したほうが稼げるって本当?」
こんな声、介護の現場でも聞いたことありませんか?
今回取り上げるのは保育士の話ですが、正直に言います。これ、介護士にとっても完全に他人事じゃないです。
こんにちは。特養(特別養護老人ホーム)で10年働いている介護士の室岡です。
室岡このブログ「シルトク介護」では、難しい制度の話をなるべくわかりやすく、現場の言葉でお届けしています。
今日のテーマは、2025年3月18日に報道された「こども家庭庁が保育公定価格(ほいくこうていかかく)の地域区分を見直す新しい補正ルールを検討している」というニュースです。
保育の話だけど、介護報酬(かいごほうしゅう)の仕組みと構造がそっくりなんですよ。だから、このニュースの背景を理解しておくと、今後の介護業界の動きも読みやすくなります。一緒に見ていきましょう。


- 保育公定価格の地域区分に新しい補正ルールが検討中
- 背景は「都道府県単位の一律化」による県境エリアの格差問題
- 介護報酬にも全く同じ地域区分の仕組みがある
- 正式な見直しは2027年度からを目指しており今すぐは変わらない
そもそも「保育公定価格の地域区分」って何?


まず基本から整理しますね。
保育所(保育園)を運営するための費用は、国が「公定価格(こうていかかく)」という形で基準を定めています。簡単に言うと、「国がこの金額を基準に補助しますよ」という単価のことです。
この公定価格の中に「人件費」の部分があります。



保育士の給料に使うお金ですね。
そしてその人件費の基準は、国家公務員の給与水準をもとに計算されています。
さらに、地域ごとに生活費や物価が違うので、「地域区分(ちいきくぶん)」という仕組みがあります。東京や大阪など物価が高い地域は単価が高く設定されていて、地方は単価が低くなる、という仕組みです。
で、2024年に人事院が勧告(かんこく、国に対して「こうしてほしい」と提案すること)を出しました。その内容が「市町村ごとにバラバラだった地域区分を、都道府県単位で大くくりにしよう」というものでした。



一見、シンプルになってよさそうに聞こえますよね。でもここに大きな問題が生まれたんです。
「都道府県まとめて」にすると何が困るの?


たとえば埼玉県の話をしましょう。埼玉県の一部の市(たとえば和光市や朝霞市など)は、東京23区とほぼ隣接しています。電車で10分、20分で都内に通勤できる場所です。
今の仕組みでは、そういった「都内に近くて生活費も高い市」は、ある程度高い地域区分が設定されていました。でも「都道府県単位で大くくり」にすると、埼玉県全体が一律の単価になってしまいます。
- 都内(東京23区)の保育士の公定価格単価:高いまま
- 隣の埼玉県の保育士の公定価格単価:下がってしまう可能性がある
これ、働く側から見たら「同じエリアに住んでいるのに、都内の保育園に就職したほうが給料が高い」という状況になります。
となれば当然、「じゃあ都内で働こう」と考える保育士が増えます。これが「都内への保育士流出」問題です。



埼玉県はこの問題を深刻に受け止めて、2024年末ごろから国に対して「格差を解消するように見直してほしい」と要望を出していました。
こども家庭庁が動いた——新しい補正ルールを検討へ


そこでこども家庭庁が動きました。
2025年3月18日、「子ども・子育て支援等分科会(こども・こそだてしえんとうぶんかかい)」という会議の場で、新しい補正ルールの検討案が提示されました。
ポイントをまとめると、こういうことです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 基本方針 | 2024年人事院勧告に準拠する方向は維持 |
| 新しい補正ルール | 隣接する県外の市町村との格差が大きくなる場合に、補正(ほせい、つまり調整すること)を加える |
| 補正の基準案 | 「他の自治体への通勤者率の高さ」などを加味する |
| 見直し時期 | 2025・2026年度は見送り。2027年度からの見直しを目指す |
「他の自治体への通勤者率」というのは、たとえば「その市に住んでいる人の何割が都内に通勤しているか」というデータです。この割合が高い地域は「実質的に都市部と同じ生活水準」とみなして、単価を高めに設定しようという考え方です。



ただし、この新ルールが正式に決まるのは早くても2027年度から。今すぐ変わるわけではありません。
現場への具体的な影響——数字で考えてみよう


「でも、これ保育の話でしょ?」と思っている介護士の方、ちょっと待ってください。
介護報酬にも全く同じ構造の「地域区分」があります。
介護報酬は、介護サービスの単価を国が定めたものです。その単価にも「地域区分」があり、東京などの都市部は加算(かさん、単価を上乗せすること)が大きく、地方は小さくなっています。
具体的な数字で見てみましょう。現在の介護報酬の地域区分は、以下のように8段階に分かれています。
- 1級地(東京23区など):人件費割合に対して20%の上乗せ
- 2級地(特別区に隣接する市など):16%の上乗せ
- 3級地:15%の上乗せ
- 4級地:12%の上乗せ
- 5級地:10%の上乗せ
- 6級地:6%の上乗せ
- 7級地:3%の上乗せ
- その他(地方の多く):上乗せなし(0%)
たとえば、介護報酬の1単位あたりの単価は基本10円ですが、1級地では10.72円になります。月に10万単位のサービスを提供している施設なら、その差は7万2000円。年間では86万4000円もの差になります。



この差が施設の運営費に影響し、最終的に働く介護士の給与にも影響してくるわけです。
保育も介護も、「国が決める単価」が現場の給与水準を大きく左右している——この構造を知っておくことが大事です。
今回、保育の世界で「地域の実態に合わせた補正が必要だ」という議論が本格化しています。これは介護の世界でも同じ議論として、いずれ表面化してくる可能性が十分あります。




よくある疑問・注意点をまとめて答えます


Q. 今の介護士の給与にすぐ影響が出るの?
ただし、介護報酬の地域区分も同じ仕組みで設定されているため、今後の介護報酬改定(次は2027年度が予定されています)で同様の議論が起きる可能性があります。今から仕組みを知っておくことが大切です。
Q. 2027年度から保育の地域区分が変わる、ということ?
ただし、自治体との調整が必要なので、スケジュールが変わる可能性もあります。まだ確定ではありません。
Q. 「通勤者率」ってどうやって測るの?
データに基づいた客観的な判断を目指しているようです。
Q. 地方の施設で働いている介護士にはメリットがあるの?
長い目で見れば、地域の実態に合った単価設定が進むことは、地方でも公平性が高まる方向につながる可能性があります。
Q. こういうニュース、どこで確認すればいいの?
このブログでも引き続きポイントをわかりやすくお伝えしていきます。
介護士として「制度を読む力」を持とう


私が特養で10年働いてきて感じるのは、「制度を知っている人と知らない人では、キャリアの選択肢が全然違う」ということです。
たとえば、転職を考えるとき。「なんとなく都内のほうが給料高そう」じゃなくて、「地域区分が1級地の施設は介護報酬の単価が20%上乗せされているから、同じ仕事量でも施設の収入が多く、給与に反映されやすい」という具体的な理由を知っているかどうかで、交渉力も変わります。
今回のニュースで言えば、「保育士が都内に流出している問題がある」「それは地域区分の単価設定の差が原因だ」「同じ構造が介護報酬にもある」——この3つをつなげて考えられると、今後の業界動向が見えてきます。
2027年度の介護報酬改定に向けて、地域区分の見直し議論が介護の世界でも起きてくるかもしれません。



「また難しい話か」ではなく「あ、あの保育の話と同じ構造だな」と思えたら、あなたはもうひとつ先を行けます。
まとめ


今回のニュースのポイントを最後に整理します。
- こども家庭庁が保育公定価格の地域区分に新たな補正ルールを検討中
- 背景は「都道府県単位の大くくり化」による、県境エリアの格差拡大問題
- 特に東京23区に隣接する埼玉県などで保育士の都内流出が懸念されている
- 新ルールは「他の自治体への通勤者率」などを加味する案が検討されている
- 正式な見直しは2027年度からを目指しており、2025・2026年度は見送り
- 介護報酬にも全く同じ地域区分の仕組みがあり、介護士にとっても無関係ではない
難しいことに見えるけど、要するに「どこで働くかで、もらえるお金の仕組みが違う」という話です。その仕組みが今、見直されようとしている。それだけのことです。



制度の動きを追い続けることが、自分のキャリアを守ることにもつながります。難しい話を「わかった」に変えていきましょう。
知って、トクしよう。
【出典】
福祉新聞Web「こども家庭庁が保育公定価格の新補正ルールを検討 地域区分見直しの格差是正へ」
https://fukushishimbun.com












コメント