「夜間対応型訪問介護が廃止されるって聞いたけど、うちの職場に関係あるの?」「定期巡回と統合って、現場はどう変わるの?」
そんな疑問を持ったあなた、正解です。ちゃんと気にしてほしい話です。
室岡こんにちは、特養(特別養護老人ホーム)介護士・室岡です。このブログでは、現場で働く介護士さんに向けて、制度の話をできるだけわかりやすく伝えることをモットーにしています。
今回のテーマは、2026年4月現在に国会へ提出された介護保険法の改正案に含まれる「夜間対応型訪問介護の廃止と定期巡回・随時対応型訪問介護看護サービスとの統合」についてです。
「自分は特養勤務だから関係ない」と思った方、ちょっと待ってください。在宅介護に関わる制度の変化は、いずれ施設介護にも波及してくることが多いですし、何より利用者さんやそのご家族から「これってどういうこと?」と聞かれる場面が必ず来ます。知っておいて損はありません。



難しい話をざっくり、でも大事なポイントはしっかり伝えます。最後まで読んでいってください。
・夜間対応型訪問介護が廃止され定期巡回に統合される
・夜間対応型は全国約180〜200か所と普及が限定的だった
・現利用者のサービスは移行期間があり急に止まらない
・訪問介護・施設系スタッフそれぞれへの影響ポイント
そもそも「夜間対応型訪問介護」って何?


まず、廃止されるサービスそのものについて確認しておきましょう。
「夜間対応型訪問介護」とは、夜間(おおむね22時〜翌6時)の時間帯に、在宅で生活している要介護の方のもとへ訪問介護員(ヘルパー)が定期的に巡回したり、緊急の連絡に対応したりするサービスです。
2006年(平成18年)に創設されたサービスで、当初は「夜間に一人でいる高齢者を支える」という強いニーズに応えるものとして期待されていました。



ところが、このサービス、実は全国的にあまり普及しなかったんです。
厚生労働省の統計データによれば、夜間対応型訪問介護の事業所数は全国でわずか約180〜200か所程度にとどまっており(2024年時点)、対して後から2012年(平成24年)に創設された「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」は約1,100か所以上が稼働しています。利用者数でも同様の差があり、夜間対応型は定期巡回の約10分の1以下という現状です。



「夜間対応型訪問介護」と「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」、名前が似ていてわかりにくいですよね。整理しておきます。
| サービス名 | 対応時間 | 看護との連携 | 創設年 |
|---|---|---|---|
| 夜間対応型訪問介護 | 夜間のみ(約22時〜翌6時) | なし | 2006年 |
| 定期巡回・随時対応型訪問介護看護 | 24時間365日対応 | あり(訪問看護と連携可能) | 2012年 |
こうして並べてみると、定期巡回の方が対応範囲も広く、医療との連携もできる分、機能としては上位互換に近い存在です。利用者にとっても、事業者にとっても、定期巡回を選ぶ理由の方が多くなるのは自然な流れでした。
今回の制度変更の背景と概要


政府が閣議決定した内容とは
2026年4月3日、政府は介護保険法などの改正案を閣議決定(かくぎけってい:内閣全体として正式に決定すること)し、国会へ提出しました。
この改正案の中に、「夜間対応型訪問介護を廃止し、定期巡回・随時対応型訪問介護看護に統合する」という内容が含まれています。
要するに、「2つあるサービスを1つにまとめましょう」という話です。


なぜ今、統合するのか
理由はいくつかありますが、大きく分けると次の3点です。
- 利用者が少なく、事業所も少ない 先述の通り、夜間対応型訪問介護の普及は限定的でした。全国で約200か所弱という数字は、「制度としては存在しているが、実態としてほとんど機能していない」状態と言えます。
- 定期巡回と機能が重複している 夜間に定期巡回・随時対応を行う部分については、定期巡回サービスがほぼ同じ機能をカバーできます。2つのサービスを別々に維持する意味が薄くなっていました。
- 制度の簡素化・効率化 介護保険制度全体として、複雑になりすぎたサービス体系を整理し、わかりやすくする動きが進んでいます。今回の統合もその一環です。
厚生労働省としては、「なくすのではなく、より充実したサービスに吸収させる」というスタンスで、現在夜間対応型を利用している方が定期巡回へスムーズに移行できるよう対応していく方針です。
現場への具体的な影響を数字で確認しよう


影響を受ける利用者・事業所はどれくらい?
先ほどの数字を改めて整理します。
- 夜間対応型訪問介護の事業所数:全国で約180〜200か所(2024年時点)
- 定期巡回・随時対応型の事業所数:全国で約1,100か所以上(2024年時点)
- 夜間対応型の利用者数:定期巡回の約10分の1以下
この数字から見えてくるのは、直接影響を受ける事業所・利用者の数は「介護保険全体から見ると少数派」だということです。
ただし、その少数の利用者さんにとっては、「夜間に来てもらえる安心感」が生活の根幹を支えているケースも多いです。



統合後も同等のサービスが受けられるかどうか、移行期間中に不安を感じる方が出ることは十分に考えられます。
廃止・統合のスケジュールは?
現時点(2026年4月)では、改正案が国会に提出された段階です。法律として正式に成立した後、施行(実際に効力が発生すること)までには一定の準備期間が設けられる見込みです。
過去の介護保険改正の例を参考にすると、法案成立から施行まで1年〜2年程度の猶予期間が設けられることが多いです。つまり、現場が「明日からすぐ対応しなければいけない」という話ではありません。



ただし、「まだ先の話」と思って情報収集を怠ると、急に対応を迫られる事態になりかねません。今から少しずつ情報をキャッチアップしておくことが大切です。
訪問介護事業所で働く介護士への影響
夜間対応型訪問介護の事業所に勤務している方にとっては、以下のような変化が想定されます。
- サービス種別の変更手続き 事業所が「夜間対応型訪問介護」として指定(認可)を受けている場合、「定期巡回・随時対応型」への変更・再指定の手続きが必要になります。これは事業所の管理者や経営者が対応する話ですが、現場スタッフも「うちの事業所はどう動くのか」を把握しておく必要があります。
- 勤務形態・業務内容の変化の可能性 定期巡回は24時間対応のため、夜間対応型よりも対応時間帯が広がる場合があります。シフトの組み方や、コール対応(随時対応:利用者からの呼び出しに応じる対応)の体制が変わる可能性があります。
- 訪問看護との連携強化 定期巡回は訪問看護との連携が組み込まれているため、医療との連携業務が増える可能性があります。これは利用者にとってはメリットですが、介護士側には新たな連携スキルが求められる場面も出てきます。
特養・老健など施設系に勤務している介護士への影響
特養や老健(老人保健施設)、グループホームなどに勤務している介護士への直接的な影響は、現時点では限定的です。
ただし、以下の点で間接的な影響が出ることは十分あります。
- 利用者・家族からの質問に答えられるようにしておく 在宅に住むご家族が夜間対応型を利用していた場合、「これからどうなるの?」と相談を受けるケースが出てきます。
- 在宅復帰支援に関わる知識として 特養でも在宅復帰(退所)を支援する場面があります。退所後の在宅サービスとして定期巡回を提案するケースが増えることが考えられます。
- 業界全体の流れを把握しておく 今回の統合は「制度の簡素化」という大きな流れの一部です。今後も同様の改正が続く可能性があり、情報感度を高めておくことが重要です。




よくある疑問・注意点


Q1. 今、夜間対応型を利用している人は急にサービスが止まるの?
法案が成立した後も、一定の移行期間が設けられる予定です。現在利用している方が「明日からサービスがなくなる」という事態にはなりません。ただし、移行期間中にケアマネジャー(ケアマネ:介護サービスの計画を立てる専門職)と相談の上、定期巡回への切り替えを行う必要が出てきます。
Q2. 定期巡回に移行したら、サービスの質が落ちることはある?
定期巡回は24時間365日対応で、訪問看護との連携も可能です。夜間対応型では「夜間のみ」「看護との連携なし」だったことを考えると、対応できる範囲は定期巡回の方が広くなります。
ただし、実際のサービスの質は事業所によって異なります。「制度として良くなっても、実際の事業所の体制次第」という部分は否定できません。
Q3. 夜間対応型の事業所に勤めている介護士は仕事がなくなるの?
サービスが廃止されるといっても、「在宅の夜間を支えるニーズ」自体はなくなりません。事業所が定期巡回へと種別を変更することで、業務を継続することが想定されています。急に職を失う事態にはならないと考えられますが、勤務先の事業所がどう動くかは確認が必要です。
Q4. この改正はいつ正式に決まるの?
2026年4月3日に閣議決定され、国会へ提出された段階です。国会での審議・可決を経て正式に成立します。通常国会(1月〜6月)の会期内に成立する可能性が高いですが、審議状況によっては延長国会や次の国会へと持ち越される場合もあります。最新情報は厚生労働省のホームページや業界ニュースで随時確認することをおすすめします。
Q5. 「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」ってそもそも何?
特徴を3つにまとめます。
- 定期巡回:1日に複数回、短時間の訪問を行います。「朝・昼・夜・深夜」のように複数回対応できるのが特徴です。
- 随時対応(ずいじたいおう:必要なときに即時対応すること):利用者がオペレーターに連絡すると、状況に応じてスタッフが駆けつけます。
- 訪問看護との一体化:同一の事業所内、または連携する訪問看護ステーションと組み合わせることで、医療的な対応も含めた支援が可能です。
「何かあればすぐ来てもらえる」という安心感を在宅で提供できるサービスで、在宅生活を続けたい高齢者にとって非常に心強い存在です。
現場の介護士として、今できること・やっておくべきこと


「じゃあ、現場の自分には何ができるの?」という話をして終わりにしましょう。
① 勤務先が「夜間対応型訪問介護」かどうかを確認する
まず自分の職場が「夜間対応型訪問介護」の指定を受けているかどうかを確認してください。施設系・居宅系(ホームヘルパー)問わず、法人全体で複数のサービス種別を持っている場合があります。
② 上司・管理者に「どう動くか」を確認しておく
現場スタッフが単独で対応できる話ではありませんが、「うちの事業所はどう対応するのか」を早めに確認しておくと、後々慌てなくて済みます。「法案が通ってから考える」ではなく、「通った時のために今から情報を集めておく」姿勢が大切です。
③ 利用者・家族への説明準備をしておく
夜間対応型を使っている利用者さんやご家族から質問を受けたとき、「よくわかりません」では困ります。「同じような夜間のサービスが定期巡回という形で引き続き利用できる予定です。



詳しくはケアマネジャーに相談してみてください」と案内できるだけで十分です。
④ 定期巡回サービスについて理解を深めておく
今後、在宅での介護ニーズは高まる一方です。定期巡回・随時対応型サービスは、在宅生活を支える中核的なサービスの1つになっていきます。「どういうサービスで、どんな人に向いているか」を知っておくことは、介護士としてのスキルアップにも直結します。
まとめ


今回の内容を整理します。
- 政府は2026年4月3日、介護保険法改正案を閣議決定・国会提出した
- 改正案には「夜間対応型訪問介護を廃止し、定期巡回・随時対応型訪問介護看護に統合する」内容が含まれる
- 夜間対応型の事業所数は全国約180〜200か所と少なく、定期巡回(約1,100か所以上)との統合は自然な流れ
- 現在利用中の方のサービスが急に止まることはなく、移行期間が設けられる見込み
- 訪問介護事業所では種別変更の手続きや勤務体制の見直しが必要になる可能性がある
- 施設系介護士も、利用者・家族への情報提供や在宅復帰支援の観点から知っておいて損はない
介護の制度って、本当に次々と変わりますよね。10年この仕事をしていても、「また変わった」と思うことは毎年のようにあります。でも、変化に追いつくためにできることは、「ひとつひとつ、ちゃんと理解しておくこと」だと思っています。



難しそうに見えても、ポイントを絞れば意外とシンプルです。今回で言えば、「夜間の在宅サービスが2種類から1種類になる」それだけの話です。
これからも、現場の皆さんと一緒に「制度の話」をざっくりわかりやすくお届けしていきます。
知って、トクしよう。
【出典】
Joint編集部「夜間対応型訪問介護を廃止 政府が閣議決定 定期巡回・随時対応サービスと統合へ」
https://joint-kaigo.com/












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